十一時四十分の席
三月二十四日、火曜日の十一時四十分。深町環は、食堂こまどりの窓際から二つ目のテーブルで、水の入ったコップを両手で包んでいた。
平日の昼の店内は、思っていたより静かだった。カウンターに作業着の男性が二人、奥の座敷に年配の夫婦がひと組。厨房の換気扇の回る音と、揚げ油がときどき跳ねる音がする。壁のホワイトボードには、店主の駒井照子さんの丸い字で「日替わり 鰆の西京焼き定食 九八〇円」とあった。
環は、勤め先の税理士事務所で迎えた三月十七日の朝を思い出していた。所得税の確定申告の締め切りが明けた朝で、事務所の誰もが声を出さずに笑っていた。それから一週間、溜まった書類を綴じ直して有給を申請し、ようやく今日から五日間の休みになった。
しのぶからは、九時すぎに一行だけ連絡が来ていた。
〈こまどり、十一時四十五分。ちょっと遅れるかも〉
しのぶの「かも」は、だいたい遅れるという意味だった。
十一時五十二分に引き戸が開いた。小田切しのぶは薄いベージュのコートの前を開けたまま、肩で息をしていた。
「ごめん。バスが市役所前で三分止まってた」
「三分なら、七分遅れた理由にはならないよ」
「残りの四分は、乗る前に信号を二回見送った分」
しのぶは向かいに座り、コートを椅子の背にかけて、首の後ろを手で揉んだ。百貨店の学生服売り場で、二月の頭から三月二十日まで、毎日採寸台の前に立っていた人の首だった。
「首、まだ痛いの?」
「メジャー首。今朝も夢で『はい、腕をまっすぐ下ろしてくださいねー』って言ってた」
「誰に」
「知らない中学生に。三百人くらい」
環は笑って品書きを差し出した。二人とも繁忙期が明ける三月の終わりに、毎年一日だけ平日の休みを合わせている。去年は電車で四十分の温泉街へ行き、おととしは植物園と美術館をはしごした。予定を立てるのはいつもしのぶで、環は時刻表と予算の係だった。今年は、しのぶの口から予定の話が一つも出てこなかった。環は、しのぶが疲れているせいだと思っていた。
「私は日替わり」と環は言った。
「じゃあ私はメンチ」
しのぶは品書きを見ないで答えた。メンチカツ定食、九〇〇円。二人でこまどりに来ると、ほとんどこの組み合わせになる。そして主菜を半分ずつ交換する。鰆なら切り身の半分、メンチなら一個。最初にそうしたのが何年前だったのか、環はもう覚えていない。
一皿ずつ
駒井さんが注文を取りに来た。白い三角巾の下で、目尻がやわらかく下がっている。
「お休み? 平日に二人そろって」
「春休みです」としのぶが言った。
「いいねえ。じゃあ、春休みの人にお願いがあるんだけど」
駒井さんはエプロンのポケットから、名刺くらいの大きさの紙を二枚出した。上に手書きで「試作ひとこと票」とある。
「四月から小鉢を変えようと思ってるの。ひじきの煮物を十一年出してきたけど、そろそろね。今日の小鉢は試作だから、食べたら一言書いてくれる? 正直に。おいしくなかったら、おいしくないって」
「正直に、ですね」と環は言った。
「税理士さんのところの人は、数字に正直でしょう」
「数字だけです」
駒井さんは笑って厨房に戻った。
十二時五分に、盆が二つ運ばれてきた。鰆の西京焼きは皮目がこんがり焦げて、白い身の縁に味噌の色が薄く残っている。しのぶのメンチカツは二個で、揚げたての衣が細かく立ち、横に春キャベツの千切りが山になっていた。どちらの盆にも、ご飯と、あさりの味噌汁と、小さな青い鉢が一つ。鉢の中は菜の花の辛子醤油和えで、炒った白ごまと、橙色の細いものが散らしてあった。
「なにこれ、オレンジ?」
「八朔かな。皮じゃなくて、実のほう」
環は鰆に箸を入れた。身がほろりと崩れる。いつもなら、ここで半分に分けて、しのぶの皿の端に載せる。切り身の半分を持ち上げかけたところで、環はしのぶの手元を見た。
しのぶはメンチカツを一個目も二個目も自分の皿の真ん中に置いたまま、ソースをかけていた。二個とも、まんべんなく。
「……あれ」
「あ、うん」しのぶはソースの瓶を置いた。「今日は、交換なしでもいい?」
「いいけど」
「なんかね、一皿を最初から最後まで、自分のだけで食べてみたかったの。鰆が嫌なわけじゃないよ」
「わかってる」
環は鰆を自分の皿に戻した。半切れを持ち上げていた箸が、行き先をなくして少しだけ宙で止まった。その手で味噌汁の椀を取る。あさりが五つ入っていた。殻を一つずつ椀の蓋に移しながら、環はしのぶの言葉を頭の中でもう一度並べてみた。一皿を、最初から最後まで、自分のだけで。
半分を誰にもあげない鰆の切り身は、思っていたより大きかった。焦げた味噌のところは三口目でなくなり、あとは身の甘さだけになった。それはそれで、おいしかった。
小鉢の菜の花は、ほろ苦さのあとに辛子がつんと来て、最後に八朔の酸っぱさが追いかけてきた。環は二口目をゆっくり噛んだ。
「どう?」としのぶが聞いた。
「苦いのと辛いのと酸っぱいのが、順番に来る。その順番が、ちゃんとしてる」
「『順番がちゃんとしてる』って感想、駒井さんに伝わる?」
「書いてみる」
しのぶは小鉢を一口食べて、何も言わなかった。もう一口食べても、やはり何も言わなかった。それからひとこと票を手元に引き寄せ、店の鉛筆で短く何か書いた。書き終えると紙を二つに折って、盆の端に置いた。環の席から字は見えなかった。
十三時五分の北浜行き
十二時三十五分、皿がだいたい空になったころ、しのぶがトートバッグから折りたたんだ紙を出した。駅前のバス案内所でもらえる、細長い路線バスの時刻表だった。
「環、今日のこのあとのことなんだけど」
「うん。そういえば何も聞いてない」
「決めてないの。っていうか、決めないようにしてた」
しのぶは時刻表を広げて、一本の線を指でなぞった。十二系統、北浜行き。駅前から海沿いの終点まで。
「市役所前を十三時五分に出るのがあって、終点まで五十四分。四百二十円。それに乗ってみたい」
「北浜って、何があるの」
「知らない。調べてない。調べないで行きたいの」
しのぶは時刻表の端を指で揃えた。
「それでね。ひとりで行ってもいい?」
環は、持っていた湯呑みをテーブルに置いた。音は思ったより小さかった。
「ひとりで」
「うん。今日はこのあと、別行動にしない? 嫌だったら言って」
奥の座敷の夫婦が勘定を頼む声がした。駒井さんが「はあい」と答えて、レジのほうへ行った。
環は、嫌かどうかを自分に聞いてみた。嫌ではなかった。ただ、足元の床が一枚、知らない板に替わったような感じがした。毎年三月のこの一日は、しのぶの立てた予定を、環が時刻表で支える日だった。その一日が、昼の一皿分で終わる。
「理由、聞いていい?」
「うん」しのぶは、また首の後ろを揉んだ。「二月から、一日に百人くらいと喋ってたの。『ご入学おめでとうございます』『ウエストお測りしますね』『大きめにしておくと三年もちますよ』って。お客さんはみんないい人だったし、楽しかったの。本当に。でも最後の週にね、休憩室でお弁当を食べながら、頭の中でずっと『おめでとうございます』って言ってた。自分の声で」
「うん」
「だから半日くらい、誰にも何も言わない日がほしい。環と一緒だと、私、喋っちゃう。環は聞いてくれるから。それが嫌なんじゃなくて」
「わかった」
環はすぐに答えた。答えてから、もう少し考えてから言えばよかったかと思い、それでも答えは同じだったと思い直した。
「黙ってついていく、っていうのは?」
しのぶは笑った。「環が隣で黙ってたら、私、三分で話しかける」
「だろうね」
「環は? 何かしたいこと、ないの」
環は答えられなかった。三月のこの一日を、しのぶの予定抜きで考えたことがなかった。今日の午後、環はどこにも行かなくていい。それが少し怖くて、少し広かった。
「これから考える」
「うん。考えてて」
勘定は別々にした。いつもなら環がまとめて払い、手帳に「こまどり 一八八〇円 しのぶ九〇〇」と書いて月末に精算する。今日は、しのぶのほうが先にレジの前で財布を出した。
「九〇〇円、ちょうどで」
小銭を受け取った駒井さんが、二人の顔を見比べた。環も九八〇円をちょうど出した。手帳は鞄から出さなかった。
十二時五十五分、しのぶは引き戸の前で一度振り返って片手を上げた。
「行ってきます」
「いってらっしゃい。十三時五分だよ。信号を二回見送らないでね」
「一回にする」
引き戸が閉まり、ベージュのコートが窓の外を左へ流れていった。
ひばり書房の三十四ページ
環は店を出なかった。席に戻ると、自分のひとこと票がまだ盆の端にあった。しのぶの二つ折りの票の隣に。
環は鉛筆を取って書き始めた。〈苦い、辛い、酸っぱい、の順番がきれいです。八朔が最後に来るので、口の中が春で終わります。辛子は今の量で〉――そこまで書いたところで、紙の端に来てしまった。裏返して続けた。〈ひじきが終わるのは少しさみしいですが、ひじきは家で作ります。〉
お茶を注ぎ足しに来た駒井さんが、紙が裏まで埋まっているのを見て目を丸くした。
「あらまあ。お友だちは一行だったのに」
「見たんですか」
「見てない見てない。折ってあるもの。でも、紙の重さでわかる」
駒井さんは笑って、空いた向かいの席に腰を下ろした。昼の客がひいて、店には環しか残っていなかった。
「お友だち、行っちゃったね」
「バスに乗りに。ひとりで」
「いいねえ」と駒井さんはまた言った。それから窓の外を見た。「わたしもね、休みの日に一回だけ、誰にも言わないで隣町の定食屋に行ったことがあるの。この店を開けて三年目くらいかな。主人にも言わないで。自分で作ったんじゃないご飯を、黙って食べたかったの。帰ってきてから話したら、主人が『で、うまかったか』って」
「うまかったんですか」
「うまかった。くやしいくらい」
環は笑った。笑ったら、肩のあたりがゆるんだ。三月の半ばまで、環は事務所で一日じゅう黙っていた。電話は先輩が取り、環は領収書の束をめくって電卓を叩き、入力をして、たまに「お預かりします」と言うだけだった。黙るのは得意だった。そのかわり、誰かとどうでもいい話をすることを、一か月半していなかった。
「この菜の花、どこで思いついたんですか」と環は聞いた。
「本なの。三軒先にひばり書房って古本屋さんがあるでしょう。あそこで去年の秋に買った、小鉢の本。昭和五十年代の。菜の花の辛子和えのところに『夏みかんを少し』って鉛筆で書き込みがしてあってね。前の持ち主の字。今は夏みかんがないから、八朔にしたの」
「前の持ち主の」
「そう。シリーズでね、四冊あるのよ。わたしは春だけ買ったの。ほかのも、まだ棚にあると思う」
環は湯呑みを置いた。行きたい場所が一つできた。
十三時四十分、環はひばり書房の引き戸を開けた。間口の狭い店で、天井まで本が詰まっている。奥の帳場に、白髪の店主が座っていた。日比野さん、と駒井さんが教えてくれた名前だった。
「料理の本はありますか。昭和の、小鉢の」
「『四季の小鉢』かな」日比野さんは立ち上がりもせず、左手の棚の上から三段目を指さした。「春はこまどりさん。夏と秋なら残ってる。冬は先月売れた」
環は棚から二冊抜き出した。函入りの薄い本で、函の角が丸くすり減っている。『四季の小鉢 夏』と『四季の小鉢 秋』。どちらの裏表紙にも、鉛筆で六〇〇と書いてあった。
「書き込み、ありますか」
「あるよ。同じ人の字。四冊まとめて一軒のお宅から出たの」
環は秋の巻を開いた。ページをめくるうちに、細い鉛筆の字がところどころに現れた。〈栗は前の日にむく〉〈しょうゆ少なめでよかった〉〈孫は食べない〉。三十四ページ、春菊と柿の白和えのところには、〈これは二人分で一皿にするとちょうどいい〉と書いてあった。
環はその字をしばらく見ていた。

「その人ね」と日比野さんが帳場から言った。「八十いくつで、娘さんのところに越すときに本を整理したの。元気な人だったよ。料理の本だけは、誰かが作ってくれるといいね、って言ってた」
「作ります」と環は言った。言ってから、自分が誰に約束したのかわからなくなって、少し照れた。
二冊を帳場に持っていき、千二百円を払った。それから日比野さんが「秋の巻の白和えはね」と言い出したのをきっかけに、四十分ほど話しこんだ。日比野さんは料理をしない人で、白和えの豆腐を水切りすることも知らなかった。そのかわり、昔の料理本の写真がどうしてどれも真上から撮ってあるのかについては、二十分しゃべった。環は春菊がこの季節にまだ売っているかどうかを聞いた。日比野さんは知らないと言って、商店街の八百屋の場所を教えてくれた。
話しながら、環は自分が声を出して笑っていることに気がついた。
二皿目と、自作の一皿目
十五時十分、商店街の八百屋の前でスマートフォンが震えた。しのぶからだった。写真が一枚。灰色がかった青い海と、錆びた手すりと、丸いバス停の標識。〈北浜〉の文字が少し傾いている。
〈終点。誰とも喋ってない。運転手さんに「ありがとうございました」って言っただけ〉
〈それは喋ったうちに入る?〉
〈入らないことにする〉
環は八百屋の店先を撮って送った。春菊が一束百九十八円。柿は季節外れで置いておらず、かわりにいちごのパックが並んでいる。
〈こっちは喋りすぎた。古本屋さんで四十分〉
〈環が? 四十分?〉
〈料理の本を買った。秋の巻と夏の巻〉
〈いま春なのに〉
〈いま春なのに〉
既読がついて、しばらく何も来なかった。環は春菊を一束と木綿豆腐を一丁、合わせて三百四十六円で買った。柿のかわりに何を入れようかと考え、いちごを見て、やめて、帰り道の果物屋で八朔を一個買った。百二十円だった。
しのぶから次の連絡が来たのは十八時二十分だった。環はちょうど台所で、ふきんに包んだ豆腐をまな板に載せ、皿を重しにして水を切っているところだった。
写真が一枚。どこかの店の白いカウンターに、アジフライ定食の盆。小鉢は切り干し大根。
〈北浜のバス停の前に定食屋があった。本日二皿目。黙って食べた〉
環は濡れた手を拭いて、返事を打った。
〈おいしい?〉
〈くやしいくらい〉
環は声を出して笑った。駒井さんの話をしようとして、やめた。それはまた今度、しのぶが喋りたくなった日に話せばいい。
三十四ページの白和えは、鉛筆の書き込みのとおりに作ると、二人分で一皿になった。春菊をゆでて絞り、水を切った豆腐をすり鉢であたって、白ごまと砂糖と薄口しょうゆを少し。柿のかわりに八朔を半分ほぐして入れた。それを、去年しのぶが旅先で買ってきてくれた藍色の中皿に盛った。
二人分の一皿を、ひとりで食べた。それはそれで、ちょうどよかった。

環は写真を撮った。
〈こちら、自作は一皿目。二人分をひとりで〉
〈ずるい。ひとりで二人分〉
〈しのぶは二皿目なんだから同じ〉
〈同じか〉
そのあとに、もう一行来た。
〈明日は自転車を借りて、川沿いをどこまでも行ってみる。またひとりで。いい?〉
環は春菊の茎を一本箸でつまんで口に入れてから、返事を打った。
〈いいよ。こっちは夏の巻を読む〉
翌日の小鉢票
三月二十五日、水曜日。環は十一時三十五分に食堂こまどりの引き戸を開けた。開店して五分で、まだ客はいなかった。
「あら、今日はひとり?」
「ひとりです。春休み二日目なので」
「お友だちは?」
「自転車で川沿いを、どこまでも」
駒井さんは三度目の「いいねえ」を言って、水を置いた。ホワイトボードの日替わりは、豚の生姜焼き定食、九五〇円に変わっていた。
「それをください。それと、きのうの本の続きを日比野さんのところで買いました。夏と秋」
環は鞄から秋の巻を出して、三十四ページを開いて見せた。駒井さんは書き込みを読んでしばらく黙り、それから「二人分で一皿」と口の中で繰り返した。
「これ、作った?」
「作りました。ひとりで食べました」
「どうだった」
「ちょうどよかったです」
駒井さんは本を環に返すと、エプロンのポケットから二つ折りの紙を出した。きのうの、しのぶのひとこと票だった。
「あなたの裏まで書いてあるのと並べたら、おかしくって。本人に、見せてもいいか聞いてもらえる?」
環はスマートフォンを出して、〈駒井さんが票を見せたいって。見ていい?〉と送った。ほどなく〈いいよ〉と返ってきた。
環は紙を開いた。しのぶの、少し右上がりの字で一行。
〈黙って食べたくなる味〉
環はそれを二度読んで、元どおりに折った。きのう、しのぶが小鉢を食べて何も言わなかった、あの二口分の沈黙が、ここに書いてあった。
「これが一番うれしかったの」と駒井さんが言った。「あなたのもね。順番がちゃんとしてる、って。両方あったから決めた。四月から出すわね、菜の花。夏みかんが出たら夏みかんにする」
「ひじきは?」
「ひじきは家で作るんでしょう。裏に書いてあった」
生姜焼きは、しょうがの効いたたれが千切りキャベツにまでしみていた。小鉢は試作ではなく、いつものひじきの煮物だった。十一年目の、最後のほうのひじき。環はそれをゆっくり食べた。
食べ終わるころ、スマートフォンが震えた。写真が一枚。川の土手に、菜の花の黄色がずっと遠くまで続いている。
〈ここ、たぶん五キロくらい全部菜の花。誰もいない〉
環は少し考えてから打った。
〈駒井さんが「両方あったから決めた」って。「黙って食べたくなる味」〉
しばらく間があった。
〈見たな〉
〈見た。四月から出るって。菜の花〉
〈じゃあ四月に食べに行く。黙って〉
〈私は喋る〉
〈じゃあ、隣の席で〉
環は笑って、湯呑みを空にした。
勘定は九五〇円ちょうど。手帳は出さなかった。引き戸を開けると、商店街の向こうの空が、きのうより少し高く見えた。春休みは、あと三日ある。夏の巻は、まだ十ページしか読んでいない。この時間、日比野さんはたぶん帳場で眠そうにしている。先月売れた冬の巻を、どんな人が持っていったのか、聞いてみてもいい。
環は鞄を肩にかけ直して、三軒先へ歩いていった。


