ポップコーンは、塩から
映画館の売店に入ったばかりの灯は、自分の大好きな「スパイス黒糖」で人気投票に勝つつもりだった。
坂の上の小さな映画館で売店に入った三浦灯は、夜ごと自分の部屋で作り込んできたスパイス黒糖のポップコーンを、館の新しい味にしたい。新作の初日、キャラメルとの人気投票に挑むが、静かな場面の多い映画の暗がりで、甘く辛い匂いと黄色い指は音のようにはまぎれなかった。負けた灯が選んだのは、自分の味を薄めることではなく、売る場所と時間を変えること。そして、地味だと思っていた塩から始めることだった。

















































